2023年分
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2014年分
2013年分
2012年分
2011年分
2010年分
2009年分
2008年分
2007年分(1~5月なし)
2006年分(11・12月なし)
2005年分(7月から)
「西日本新聞」12月6日(金)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「長い歳月」
紺野夏子さん「ララバイ」(「南風」56号、福岡市)、今給黎靖子さん「ひこばえ」(「第八期九州文学」586号、福岡市)
江藤多佳子さん「深秋」(南風」56号)、由比和子さん「昭和四十年代初め 筑後川田園物語」(「第八期九州文学」586号)、出町子さん「森へ④」・斉藤てる子さん「矢嶋家の人々」第五章(「詩と眞實」905号、熊本市)
全国同人雑誌協会ニュースレター8号 全国同人雑誌評
和田伸一郎
今回、『文芸思潮』編集部から届いた同人雑誌は8冊だった。この中には私が初めて見る同人誌が2冊あった。主に散文作品を中心に読んだ。ただし連載小説は基本的に取り上げないようにしている。全体を読まないうちは評価が難しいので。
『第八期 九州文学 2024年夏号』(福岡県)。
季刊ながら毎号三〇〇メージというボリュームは同人誌の枠を超えている。目次には詩、俳句、随想、掌編、小説、コラムと盛りだくさんだ。この中でおもしろく読んだのは、小説「星月夜」森 美樹子と「余生」佐々木信子だ。
「星月夜」(森 美樹子)はLINEの高校の同窓会グループから、今年の同窓会の集合場所の通知が来る。今は東京に住んでいる「僕」はたまたま神戸に来ていたので出向く。そこに一人の女性が立っていて二人だけの同窓会をするというストーリー。巧みな構成で、女性は「僕」を自分の思い出の場所へと案内し、やがて「僕」は阪神大震災で亡くなった弟の墓参のために来たことが明らかにされる。読み進むにつれて、それぞれの人物像が読書の前に鮮やかに浮かび上がってくる。
「余生」(佐々木信子)は、私小説風な作りで、ATMで振込めなかったため、銀行に行って「ATM振込振替制限解除依頼書」の手続きをする。銀行側はこれはオレオレ詐欺防止の高齢者対策のためだという。こうした六八歳の「衿子」の体験した救済という名目の理不尽さが淡々と描かれていく。私は20年以上前に郵便局で同人誌の印刷費を振込もうとしたら、十万円以上は身分証明書が必要だと初めて言われ、どうしてかと聞くとテロ対策だといわれて唖然としたことを思い出した。宛先を見れば一目瞭然だというのに規則だからどうにもならないと。現在では、新しいシステムに適応できないと便利になるはずの生活が途端に不便になる。地味なことだが、こうした小さなことを訴えていくのも文学の役割だと思う。
短文だが、コラム「留学生余話」(白水百合子)も興味深い。㉑「南アジア男性の長髪と髭」では、「南アジアでは、坊主頭に髭をそっている姿は囚人を連想させるそうだ。なので彼らにとっての髭と長髪は「私は健全です」というアピールだし、男性としてのステイタスと信じている。」しかし、日本のアルバイト先である食品工場では衛生上、髭と長髪はNGだから従わなければならない。そうした国際理解の難しさをさりげなく語っている。
『季刊 遠近 87号』(神奈川県)
こちらも季刊で、七三ページと薄いが同人誌評でよく見かける書き手がそろっている。同人誌で長く小説を書くという難しさ。初期、中期と書きたいものを書いてしまった後で何を書くか。プロのように依頼されて書くというわけではなく、自発的に身銭を切って書くのであるからせめて自分にとって価値ある作品を書きたい。
「てるちゃん」(平井文子)は、求職で面接に行ったら、その工務店の社長が、大阪で極貧生活をしていた幼なじみだった。こうした偶然の出会いから物語が展開していくというよくあるパターンだが、テンポよく話が進み読者を惹きつけていく。
「生きる不安」(塚越 淑行)は主人公が後に企業爆破テロで逮捕された犯人と仲良くなっていたという話で、その老年のだらしない落ちぶれた犯人像を描いているが、どこかに青年時に正義感に燃え、無謀な狂気的な犯行を実行した犯人像も描かないと読者としては物足りない。
『こみゅにてぃ120号』(埼玉県)
120号だが、私は今回初めて見る同人誌である。小説中心で、文芸評論的なエッセイもある。
小説「病棟の博士」(一乗谷かおり)は、小説というよりレポートいった感じで主人公涼子の大学附属病院勤務の日常が淡々と描かれている。ノンフィクション風な小説で、精神医療の現場を読者に提示してくれる小説だ。
「アメイジング・グレイス」三沢 充男はサスペンスめいた展開の小説である。求職中の大学生「ボク」が自分と同じ着信音を耳にする。その拾ったスマホから物語が展開する。ボクはその会社を落ちるが、拾ったスマホの持ち主には、合格のメールが届く。そこでボクは意地悪して持ち主にそのことを教えないことにした。そこへ、スマホの持ち主から名前入りで返してほしいというメールが届く。やがてその会社からボクに、枠が空いたためという理由で合格の通知が来る。入社式で、名札を見て、落ちたと思っていたスマホの持ち主に出会う。しかもオリエンテーションでその持ち主と行動を共にすることになったという展開で読者をひきつけていく。
「大正文学談義(一)尾高 修也は、中村光夫や福田恆存といった文芸評論家が軽視し、否定的だった谷崎潤一郎の初期作品に注目し、そうした作品を通して模索していたからこそ後の作品が生まれたと、その価値を再評価していて興味深い。
『カプリチオ55号』(東京都)創作五篇、エッセイ一篇。
「京都梶井基次郎航路」(塚田吉昭)は面白い試みだと興味深く読んだ。これは梶井基次郎著「檸檬」の舞台を訪ね歩くといった地誌的な評論的エッセイである。「檸檬」は百年前の京都の町中を舞台とした小説である。現在ではその面影のかけらもないことが予想される。訪ねながら、「檸檬 断片」といったものを引用しながら、本作との違いを紹介していく。
文芸評論が一般読者に読まれなくなっているらしい。こうして間口を広げる工夫が必要な時代になったということなのだろう。
次は前橋文学伝習所事務局宛に送られてきたものから二冊。
『まがね66号』(岡山県)は小説九篇に随想と詩が並んでいる。
小説「『サザエさん』が始まれば」(文月ぼたん)は、「脳性麻痺に生まれついたことで、常に不自由さが付きまとう私の人生が始まってから、もう半世紀ほどの時が過ぎた。」という書出しで、「障害者」としての幼い頃からの生活が淡々と描かれている。その文体はユーモラスティックで暗さや悲惨さは感じられない。それは「私には武器がある。もちろんその一つは、この「口」だ。(中略)更なる私の武器は、この「想像力」。そして、日々そこから生まれる「ユーモア」なのだ、と。」いうことで頼もしい。
『追伸16号』(愛知県)は、小説、戯曲、エッセイ、ライフヒストリー、ノートとバラエティに富んでいる。この中で、ノート「ピョンヤンとの時差(下)革命劇から生還した女性たち」(津田正夫)を興味深く読んだ。一九八七年の大寒航空機爆破事件の犯人である北朝鮮秘密工作員金賢姫(キム・ヒョンヒ、偽名:蜂谷真由美、当時25歳)について事件の全容を改めて検証している。「金生日は北朝鮮の人たちの存在理由であり、彼らが生きていく根拠であり、すべての価値の根源だ。」と書かれているが、現在の日本ではわかりにくい。戦時中の軍国教育に近いのかもしれない。
また、一九七〇年に起きた赤軍派学生による日航機よど号ハイジャック事件の犯人の妻が、積極的に日本人拉致に関わっていた。その妻が後に「北朝鮮は特権を持った労働党が人民を支配している独裁国家だと理解できると、労働党の庇護のもとに生活している「よど号」グループは、人民を解放する革命家などではなく、特権階級の手先でしかないということが分かってきました。」と書くようになる。その過程をつぶさに描いていて惹きこまれた。
「西日本新聞」11月6日(水)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「傷」
多胡吉郎さん「ピアニスト・ケン 主よ、人の望みの喜びよ」(「火山地帯」212号、鹿児島県鹿屋市)、後藤克之さん「雨の休日」(「絵合せ」9号、福岡市)
立石富生さん「飲水思源」・野見山潔子さん「飛行機雲」(「火山地帯」212号)、矢和田高彦さん「桜花」(「文芸山口」377号、山口市)
長崎県の同人誌 投稿者:にいな2024/10/09
10月9日水曜日の長崎新聞「長崎県の同人誌」欄には、10誌の文芸同人誌が取り上げられています。「問われれる 未来への覚悟」と題して小出久記者の執筆。「ら・めえる」88号では、吉田秀夫氏の小説「天正遣欧少年使節」藤澤休氏の評論「日本人の勤勉と時間厳守の精神」草場里見氏の「長崎の文学碑を訪ねて」が取り上げられています。「西九州文学」51号では、寺井順一氏の小説「語る女」居原木咲子氏の小説「幸せな老後を探す旅」などが取り上げられています。「長崎文学」106号では野沢薫子氏の小説「町田医院の待合室」松尾律子氏の小説「春爛漫」が取り上げられています。
長崎新聞文化欄には、長崎ペンクラブ(「ら・めえる」)会長を辞した田浦直氏(87歳)のインタビュー記事が掲載されています。
「西日本新聞」10月3日(木)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「人が集う」
みやまそらねさん「ほとりにて」(「龍舌蘭」212号、宮崎市)、野沢薫子さん「町田医院の待合室」(「長崎文学」106号、長崎市)
伊福満代さん「レモンを手に」(「龍舌蘭」212号)、松尾律子さん「春爛漫」(「長崎文学」106号)、水木怜さん「幸せのパズル」・藤代成美さん「遺言」(「照葉樹二期」、福岡市)、谷村清子さん「麦の穂」(「飄」124号、山口県宇部市)
岡林稔さん「昭和十六年の中村地平」(「龍舌蘭」212号)
「西日本新聞」9月3日(火)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「死者への想い」
岬龍子さん「海を渡る」(「詩と眞實」903号、熊本市)、矢和田高彦さん「別れ花」(「山口文芸」376号、山口市)
さとうゆきのさん「私の筑豊物語-タイワンドジョウ-」(「海峡派」160号、北九州市)、下村幸生さん「彷徨」(「宇佐文学」74号、大分県宇佐市)、居原木咲子さん「幸せな老後を探す旅」(「西九州文学」51号、長崎県大村市)
「西日本新聞」8月1日(木)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「立場」
有森信二さん「涸れ川」(「海」99号、福岡市)、佐々木信子さん「余生」(「第八期九州文学」585号、福岡市)
周美麗さん「国語話せば」(「龍舌蘭」211号、宮崎市)、後藤克之さん「見えない斜面」(「絵合せ」8号、福岡市)、本山航大さん「紅茶を飲みながら」(散文詩「隣り村」別巻、福岡市)
「西日本新聞」7月2日(火)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「捉え方の変化」
野見山潔子さん「紅葉」(「火山地帯」211号、鹿児島県鹿屋市)、山田佳苗さん『夏の花のままで』(花書院)
立石富生さん「一滴のせれなあで(「火山地帯」211号)、本多和代さん「下駄を持って」(「長崎文学」105号、長崎市)、井上淳子さん「シャガの花」(「筑紫山脈」45号、福岡市)
「西日本新聞」6月3日(月)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「ケア」
宮脇永子さん「長い一日」(「南風」55号、福岡市)、木島丈雄さん「雨上がりの朝に」(「第八期九州文学」584号、福岡市)
和田信子さん「いつもの三人」(「南風」55号)、金谷相亨さん「絆3・4・5」(「詩と眞實」898号、熊本市)、水木怜さん「幸せのパズル」(「照葉樹二期」25号、福岡市)
「西日本新聞」5月2日(木)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「殺生」
本山航大さん「むしやしない」(「隣り村」8号・最終号、佐賀市)、吉井恵璃子さん「鹿の瞳(め)」
文芸誌「ふたり」31号・最終号(佐賀県唐津市)より白石元秀さんの連載エッセイ「風の羽音」・白石すみほさんの小説「昏夢」など
「隣り村」主宰の八田千恵子さんは6月に別巻発行予定
「西日本新聞」3月29日(金)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「集団を描く」
立石富生さん「異形の町」(「火山地帯」208~210号、鹿児島県鹿屋市)、若窪美恵さん「バネ指」(「海峡派」159号、北九州市)
野見山潔子さん「箱の神様」(「火山地帯」210号)、後藤克之さん「男として」(「絵合わせ」7号、福岡市)、都満州美さん「難を逃れた私」(「海峡派」159号)、矢和田高彦さん「切り出し」(「文芸山口」373号)
「西日本新聞」2月29日(木)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「つながり」
有森信二さん「空に返す」(「海」第二期31号、福岡市)、みやまそらねさん「うみさちやまさち」(「龍舌蘭」210号、宮崎市)
高岡啓次郎さん「妄想日記」(「海」第二期31号)、野々上万里さん「彼岸」、藤崎正二さん「濱砂さん その2」(共に龍舌蘭」210号)、宮川行志さん「荷馬車」(「詩と眞實」895号、熊本市)
「西日本新聞」1月31日(水)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「死者の弔い」
出水沢藍子さん「鞦韆(ぶらんこ)」(「小説春秋」34号、鹿児島市)、小河原範夫さん「渡来人の盆踊り」(「ガランス」31号、福岡市)
下村幸生さん「能面の内」(「宇佐文学」73号、宇佐市)、齊藤きみ子さん「マニーズ・ヒストリー 3」(「小説春秋」34号)、入江修山さん「父のマリア」(「ガランス」31号)、あびる諒さん「エロ仏陀(七)居眠り村」(「詩と眞實」895号、熊本市)