て く る
28号
【「惑う」井ノ口夏恵】
この作品、全編が「唐突」でした。主婦であるツユは夕刊の配達をしています。理由は「夕暮れ時が耐えられなかった」から。同業である20歳ほど年下の藤原はツユに辛辣な言葉を浴びせ、何かに付けて突っかかってくるのですが、借金を頼んだり、果ては関係を持ってしまいます。ツユの夫マスオは別の場所で仕事をしており、たまにしか帰ってきません。藤原に対するアンビバレントな思いも解るような気がするのですが、やはり「唐突」です。「ツユにはまるで常識というものがない。」と書かれているように、行動も服装も並み外れです。経済的にあまり余裕がないようなのですが、藤原にお金を渡したり、気が向けば無計画にお金を使ったりします。いったいどんな育ち方をしたのかと思うのですが、登場する母親はごくまっとうに描かれています。その「唐突」さにかなり違和感がありましたが、勢いがあって荒削りの魅力も感じました。ツユの、夫に対する恋愛物語であることは伝わります。当方の読みが型にはまった常識にとらわれ過ぎているのかとも思います。みなさんはどう読まれたのか知りたいです。
byひわき 2021.07.28