さくさく
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【「野方物語」山際響】
私は「適応障害」や「発達障害」などの言葉が気に掛かります。新聞の見出しなどで見つけると、つい読んでしまいます。この病で苦しんでいる方には申し訳ないのですが、確かに私の一部分と重なるように思われます。ですから、この作品は興味深く拝読しました。主人公の零子は24歳でひとり暮らしをしています。具合が悪くなり会社を休み、薬屋に行きます。そこの店主である女性との遣り取りが描かれています。他人との接触を避けたい主人公の行動や内面を息を詰めるようにして読み進みました。しかし、あまりに丁寧に分析的に描かれていて、バランスが良すぎるように感じます。結果、勢いが削がれたようで、最初の不穏な気配が薄れてゆくみたいでした。極楽鳥花が結ぶ偶然も、安易ではないでしょうか。
byひわき