季刊文科

第84号
久保田正文先生を偲ぶ=難波田節子さん
 かつて、雑誌「文學界」の同人雑誌評を行っていた評論家の久保田正文氏について、没後20年になると、難波田節子氏が「季刊文科」84号に追悼を文を寄せている。久保田氏は朝日カルチャーセンターで教室をもっていたそうで、難波田氏は、その教室に通い、その後、久保田氏が「季刊遠近」を主催したことで、学んできたといういきさつが記されている。久保田正文氏は、大森の馬込付近に住んでいたらしい。自分は、池上に住んでいた頃、「文芸研究月報」新聞を発行していた。池上梅園の近くに、文芸評論家の浜賀知彦氏(故人)が住んでいた。その時、久保田正文氏が亡くなる前に親しくしており、近くだから交流があったという。ある時、私の発行する月報に「文學界」の同人雑誌で取り上げられた作品、作家リストがあるのを見て、「ちょっとそれ貰えないか」という。いいですよ。でもなんで? と聞くと、そこにある難波田節子という作家は、浜賀さんが収集している同人雑誌によく出る作家のなのだだという。そして、その目録を作成中だという。《参照:浜賀コレクション関連 「戦後東京南部の文学運動」《関係雑誌細目》第9輯・浜賀知彦編著》その時は、なんで難波田さんが、東京南部の同人誌に書いていたのかが、不思議だったが、久保田氏の関係だったことわかった。こんなとを書いているうちに、彼女の新刊「遠ざかる日々」(鳥影社)が届いた。文芸評論家の勝又浩氏が、あとがき解説をかかれている。とにかく、家庭の出来事を気を逸らさず読ませる技術は秀でている。多くの人は、それを普通のように思うのは、結局、日本に家庭小説というジャンルがないためかもしれない。
《文芸同志会通信 2021.05.26》

第81号
 文芸誌「季刊文科」81号に眼を通している。《鳥影社サイト》本誌は、定価に対し読者の支援寄付を募るシステムで、文芸同人誌の作家たちを優遇するシステムがあり、発行の助けになっているようだ。そのせいか、今号は同人雑誌評の担当を2人にし、拡大充実させている。有料でなければ行わないような試みもしている。ここが無料サービス化したネット情報との違いであろう。また、特集の三島由紀夫が大変面白い。版権の面倒なところのある作家だが、その知られざる一面がわかって面白い。自分が同人誌「砂」に参加していた時に、今は故人となった同人が,三島との交流があり、猪瀬直樹氏が三島論をしっぴつするのに、取材対象になっていたのを記憶している。その猪瀬氏が経過を記している。
《文芸同志会通信 2020年7月21日》