鳥語 78 【「初雪をたれに踏ませむ」岩田孝子】 第二次大戦後、間もない頃の大阪が舞台です。茨木雪(いばらきすすぎ)の視点から彼の親族を交えた出来事が展開してゆきます。冒頭、いろいろな人が出てきて判りにくかったのですが、読み進むうちに独特の世界に馴染んでゆきました。舞、地謡など伝統芸能に詳しく、当時の雰囲気がよく描き出されています。文体や表現も作品としっくり調和しています。夏目漱石が描く無産知識人を思わせる作品です。なんとも優雅な大阪弁の存在を初めて知りました。 byひわき