babel
第3号
【「季節」秋尾茉里】
主人公は31歳、女性。精神科に通院し、生活保護を受けています。鬱症状がひどく活動困難な冬から、気温の上昇とともに躁状態になり、また冬を迎えるまでが書かれています。女性の主治医、カウンセラー、家族、生活状況が詳しく語られるのですが、どこか客観的な描写が読者に作品世界を実感させます。新しいカウンセラーとの遣り取りが興味深く、夢をもとに精神分析しようとする相手と患者の反応の、どちらも説得力あります。以前、担当していた男性のカウンセラーと共有した時間が淡々と書かれています。それだけなのに、主人公の男性カウンセラーに対する想いが伝わってきました。随所の文章表現も好きです。
byひわき