八月の群れ

Vol.68
【「夜を漕ぐ」葉山ほずみ】

人が抱く「生」に対する疑問に真っ正面から取り組み、誠実に考えられています。ほんの1日の出来事なのに、大きな広がりを持っています。
冒頭、主人公(女性・20代半ば)は弟の腸切除手術後、焼き肉屋に入ってホルモンを注文します。切除した腸を見た後にです。いくらなんでも、こんなことはないと思いましたが、読み進むうちに納得しました。焼き肉屋のおじいさんも、とてもいいです。見知らぬ人が、相手の心の痛みに触れずに癒やしてゆく。レイモンド・カーヴァーの「ささやかだけれど、役に立つこと」を思い出しました。
byひわき