文芸百舌

3号
【創作「続・夢を見た」坂之上千代】
2号からの連載
夢の断片でしょうか、散文詩のような短文が前号と合わせて13編ならんでいます。
「誰かの愁いで捻じ曲がることもなく、犬の尻尾の影にさえも踏まれていない緻密で真っすぐな砂利道。」のように、独特の表現が散りばめられています。短文はそれぞれに独立していて、関連はありません。作者はこの連作を誰に向かって、何を表現しようとして描いたのか、正直なところ感じ取れませんでした。詩が理解できない私は、何かを読み落としたり読み違えているのかもしれません。
【エッセー「母と子」山下とも】
父親と兄弟による家庭内暴力を受けて育った幼少期が書かれています。母親は100歳になり老人ホームに入っていて、現在70歳の筆者はご主人と楽しく暮らしておられます。
被害者の立場で書かれているのですが、殊更に訴えるでもなく、自己憐憫もなく、事実が淡々と書かれています。それが返って読者の想像力をかき立て、幼い頃の筆者の状況をリアルに伝えており、夢中で読みました。強い読後感がありました。
byひわき