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No.508
【「Mくんとの一夜」蔦恭嗣】

主人公は年に1度くらいの割合で、Mくんと呑みながら宗教論や人生論などの話をします。出会いは主人公が助手として勤務することになった大学で、高卒のMくんは技官として働いていました。その後、Mくんは退職して職をいくつも変えます。結婚もせず、豊かさを求めもせず生きている彼。主人公はおそらく自分の生活は語らなかったでしょう。そしてどこかでMくんの何ものにもとらわれない暮らしぶりが羨ましく思われたかもしれません。たまにしか会わないけれど、会った後は大きな満足感を得たことでしょう。気軽にいつでも会う状況なら、このような関係は作れません。最後が特に印象深く、余韻がいつまでも色濃くあとを引きました。この作品に出会えてよかったです。
byひわき 2021.07.31